「営み」


「営み」

 


 静物を深い意味を込めて意識的に構成して撮影するという課題だと思う。静物画は画家の間でも、絵画習得や実験的な試みの課題であった※1。写真で同じことを行う場合、写真メディアの特性を活かしたものにしたい。写真の特性として挙げられるものは、1.カメラという機械の眼を通すこと、2.そのことにより、誰もが容易に撮影出来ることであると思われる。また写真の特徴として、3.絵画の様に意識的にじっくりと構成するというよりは偶然性に任せる面が大きいということ、4.現実の被写体と向き合うこと、5.絵は絵の具だが写真は光で描くことである。上記5つの特性を満たすものにしたい。加えて言えば、写真にはこれらの特性から、心を癒す効果がある。

 この写真「営み」は母とのこれまでを象徴する写真である。派手な綺麗な写真ではないが、味のある写真だといいなと思う。機械の眼を通すことにより、実物とは違った見え方や色になる。またカメラを使うことにより私でも簡単に記録出来る。そのことにより偶然的にその場をパッと捉えている。そこにあるものは現実に存在するものに向き合って撮影したものである。その関係性も写されている。最後に光の特性を活かした露出、加法混色、光の質や方向性を選んでいる。朝の静かで落ち着いた気配をややアンダーな露出や、一方向からの光、色の自然さで表現している。

 この写真は有馬・野川生涯学習支援施設アリーノ2Fギャラリーで展示された(第11回ソウルエキシビション)。来場者の感想としては色や切り取り方といった感性が好きという声を戴いた。搬入・搬出・展示には関わらなかったが、一連の流れは体験した。写真やカメラというメディアや道具を使うことにより、芸術が身近になったことが、写真の特性から来ていることが明らかである。それが写真の魅力である。やや初歩的な議論に傾いた感があるが、それだけに大切なことを整理できた。心を元気にすることに写真は役立つので、特性を活かし、生活に創作に活用してゆきたい。

 


 


参考文献・資料:

※1「静物画」八坂書房、エリカ・ラングミュア著・高橋裕子訳

 


以上をhttps://www.lucanust-angle.netで掲載している。